水循環解析モデル(SHERモデル)の公開について
国土交通省 河川局 河川環境課
流域治水調整官 清水 裕
独立行政法人 土木研究所
水工研究グループ
上席研究員 吉谷 純一
都市型水害の多発、河川水質の悪化、通常時の河川流量の減少、地下水位の低下や湧水の枯渇等、都市地域の水循環系を取り巻く問題に対処するためには、流域の水循環系の変化の変遷を正しく理解するとともに、今後各種の対策を実施した場合の効果を定量的に評価することが不可欠となります。
そのためには、水文観測とモデルが必要となります。
これまでいくつかの都市河川流域で水循環系定量化モデルを用いた検討が実施されてきていますが、精緻なものから簡略なものまで様々なモデルが適用されたおり、必ずしも必要な精度が保証されているとは言えません。
また、今後都道府県や市町村などが主体的に地域の実情を踏まえた水循環系健全化施策を推進することが求められますが、それぞれが一から精度検証を進めながらモデルを選定していくことは効率的とは言えません。
このような認識に立ち、国土交通省として、実績ある解析手法を提供することにより地方自治体等による施策の立案を支援するための試行として、今回「SHERモデル」の公開を行うこととしました。
「SHERモデル:Similar Hydrologic Element Response Model」は、流域を水文特性が似かよったブロックに分割し、分割ブロック毎に流出を物理現象として捉え計算を行うものであり、既に神田川、海老川、東川、和泉川等で適用されています。
パソコンで容易に計算できる、演算時間が短い等の実用的な利点を有する簡易なモデルであるにも拘わらず比較的精度の高い定量化が可能です。
SHER モデルを都市河川流域に適用する際には、過去の流量観測データが不可欠ですが、より精緻な解析、あるいは、データが不足もしくは全くない流域でも、ある程度の精度で評価できるWEPモデル(独立行政法人土木研究所が開発)が、土木研究所から近日中に公開される予定です。
SHERモデルの公開に当たり、著作者の了解を得て、解析ソフト(実行プログラムのみ)及びその使い方を解説したユーザーズマニュアルを「(社)雨水貯留浸透技術協会」のホームページから、ダウンロードできるようにしました。使用許諾条件にあるとおり、プログラムの改造禁止、結果についての責任を提供者が負わないこと等をユーザーが承諾することをダウンロードの条件とします。
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